朝、出社したら製品がサビていた。そんなことが本当に起こります
昨日までピカピカだった製品が、翌朝には茶色いサビが出ている。
「そんなこと本当にあるの?」と思われるかもしれませんが、金属を扱う工場では珍しい話ではありません。
特に梅雨から台風の時期は、空気中の湿度が一気に高くなります。目には見えない「湿気」が、大切な製品の品質を少しずつ蝕んでしまうのです。
今回は、金属プレス工場で実際に経験した失敗談も交えながら、湿気とサビの怖さ、そして現場で実践している対策をご紹介します。
サビは目に見えない湿気から始まる
サビは、金属の表面に湿気が付き、空気中の酸素と反応することで発生します。
人間の目には見えないほど小さな水分でも、金属にとっては十分な原因になります。
梅雨や台風の時期は工場内の湿度も高くなりやすく、保管している製品や半製品にサビが発生するリスクが一気に高まります。
加工そのものに問題がなくても、保管中の湿気だけで品質が損なわれることもあるため、この時期は特に注意が必要です。
サビ対策にはコストがかかる。でも廃棄のほうがもっと高い
サビが発生した製品は、そのままお客様へ納品することはできません。
製品によっては手直しできる場合もありますが、状態によってはすべて廃棄せざるを得ないケースもあります。
もちろん、防錆油や乾燥剤などの対策にはコストがかかります。
しかし、製品を作り直す費用や納期遅延、お客様からの信頼低下まで考えると、事前の対策のほうがはるかに安く済むことがほとんどです。
だからこそ現場では、「サビを直す」より「サビを発生させない」ことを最優先に考えています。
現場で実際に起きたサビの失敗談
以前、ある製品を協力会社へ加工依頼していたときのことです。
その製品は、熱処理を行ったあとに表面を磨く「バレル研磨」を行い、最後にメッキを施す工程になっていました。
ところが、メッキ工程の直前で協力会社から一本の電話が入りました。
「製品にサビが出ています。」
その一言で、現場の空気が一気に変わりました。
急いで対応を検討し、工程を一つ戻して、もう一度バレル研磨を実施することにしました。
サビを削り落とし、表面をきれいにしてから改めてメッキを施せば問題ないだろうと考えたのです。
しかし、完成した製品には細かな「ツブツブ」が無数に残ってしまいました。
見た目にはサビが取れたように見えても、一度サビによって傷んだ金属の表面には、目に見えないほど細かな凹凸が残ってしまいます。
その凹凸の上からメッキを施したことで、ツブツブとなって表面に現れてしまったのです。
この経験から改めて感じたのは、サビは見た目だけの問題ではないということです。
一度発生したサビは、表面そのものを傷めてしまうため、完全に元通りにすることは簡単ではありません。
だからこそ、「後から直す」のではなく、「最初から発生させない」ことが品質を守る一番の方法なのです。
現場で実践している3つのサビ対策
① 防錆油を塗る
最も基本的で効果的なのが、防錆油を塗布することです。
防錆油は金属表面に薄い膜を作り、空気や湿気を遮断して水分が直接触れるのを防ぎます。
シンプルな方法ですが、防錆効果は非常に高く、多くの工場で採用されています。
② 乾燥剤を活用する
製品を保管・輸送する際には、乾燥剤を一緒に入れることも有効です。
乾燥剤が箱の中の湿気を吸収することで、サビが発生しにくい環境を維持できます。
特に密閉した状態で使用すると効果を発揮しやすいため、保管方法と組み合わせることが大切です。
③ 気化性防錆剤(VCI)を活用する
最近では、**気化性防錆剤(VCI)**を使用する工場も増えています。
気化性防錆剤は、防錆成分が少しずつ気化し、密閉された袋や箱の中に広がることで、金属の表面に目に見えない保護膜を形成します。その膜が湿気や酸素の影響を受けにくくするため、サビの発生を抑えることができます。
防錆油のように製品へ直接塗布する必要がないため、製品の形状によっては作業性が良くなる場合もあります。
サビ対策は協力会社との連携も重要
サビ対策は、自社だけ頑張れば良いというものではありません。
加工をお願いする協力会社とも、
・どの工程で防錆油を塗るか
・保管時に乾燥剤を使用するか
・どのような環境で保管するか
などを事前に取り決めておくことが重要です。
品質は一社だけでは作れません。
関わるすべての会社が同じ意識を持つことで、初めて安定した品質につながります。
品質は加工技術だけでは守れない
プレス加工では、つい加工技術や精度ばかりに目が向きがちです。
しかし実際には、保管方法や運搬方法、湿気対策まで含めて「品質管理」です。
梅雨や台風の時期は、目に見えない湿気との戦いでもあります。
防錆油や乾燥剤の費用は決して無駄なコストではありません。
製品の廃棄を防ぎ、お客様からの信頼を守るための「投資」です。
私たちは、お客様と一緒に最適な工程や品質管理の方法を考えながら、一つひとつの製品を大切に製造しています。
湿気の多い季節だからこそ、「この保管方法で大丈夫かな?」「この工程でサビは発生しないかな?」と少しでも気になることがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

