金属プレス加工の外注先を選定する際、価格や納期、加工技術と並んで重要になるのが品質保証体制です。
特に、現在の協力会社で品質上の不適合が繰り返されていたり、是正処置報告書の内容が十分でなかったりすると、今後も安心して発注を続けられるのか、不安を感じることがあるのではないでしょうか。
不適合を発生させないことが第一であるのは言うまでもありません。しかし、万が一不適合が発生した場合に、どこまで原因を追究し、どのような再発防止策を講じることができるかも、協力会社を評価する重要なポイントだと考えています。
当社では、製造現場からの改善提案による不適合の未然防止に加え、徹底した原因分析と、金型構造にまで踏み込んだ再発防止に取り組んでいます。
今回は、当社の品質保証に対する考え方と、具体的な取り組みについてご紹介します。
不適合は発生してからではなく、未然に防ぐことが重要
品質保証というと、不適合が発生した際の原因調査や是正処置を思い浮かべる方も多いかもしれません。
もちろん、それらは重要な業務です。しかし、不適合が発生すれば、選別や再製作、納期調整など、お客様にも大きな負担をかけてしまいます。
だからこそ、当社では不適合が発生する前に、そのリスクを低減することを重視しています。
その取り組みの一つが、製造現場からの予防・改善提案です。
当社では、毎年50件近い予防・改善提案が製造現場から提出されています。
日々の生産活動の中で、作業者が感じた危険や不便、品質上の懸念などを改善のきっかけとし、不適合の未然防止につなげる活動です。
実際に作業を行っているからこそ気付ける問題も少なくありません。
小さな問題であっても、放置すれば大きな不適合につながる可能性があります。そうしたリスクを現場から拾い上げ、改善につなげていくことが重要だと考えています。
品質保証部門だけで品質を作り込むのではなく、製造現場の一人ひとりが改善に関わることが、品質の安定につながると考えています。
真因を追究するための「なぜなぜ分析」
不適合が発生した際、当社では「なぜなぜ分析」を活用して原因を掘り下げています。
ここで重視しているのは、単に「なぜ」を5回繰り返すことではありません。
大切なのは、現場で確認された事実を積み重ね、推測と事実を区別しながら、真因を明らかにすることです。
例えば、作業者が部品を間違った向きに取り付けてしまった場合、「作業者が確認を怠った」という原因で分析を終わらせることは簡単です。
しかし、なぜ確認できなかったのか、そもそも間違えて取り付けることができる構造に問題はなかったのか、と掘り下げることで、別の原因が見えてくる場合があります。
また、当社では不適合が発生した原因と、それを検出できずに流出させた原因を分けて分析しています。
不適合の発生を防ぐ仕組みと、不適合品をお客様へ流出させない仕組みは、それぞれ考える必要があるからです。
そして、原因分析によって導き出した真因に対して、実現可能で継続できる再発防止策を検討します。
原因分析の目的は、報告書を完成させることではなく、同じ不適合を繰り返さないこと。
当社では、この考え方を大切にしています。
再発防止策を「作業者への再教育」だけで終わらせない
不適合が発生した際、再発防止策としてよく挙げられるのが「作業者への再教育」や「確認の徹底」です。
もちろん、教育は品質を維持するうえで必要不可欠です。間違いが発生した場合には、その内容を指導し、作業者の知識や技能を向上させることも重要です。
しかし、それだけで十分なのでしょうか。
例えば、部品を間違った向きに取り付けたことが原因で、不適合が発生したとします。
この場合、正しい取付方法を再教育することは当然必要です。
一方で、そもそも間違った向きでも取り付けられる構造になっているのであれば、作業者が変わったときや、時間が経過したときに同じ問題が発生する可能性は残ります。
そこで当社が重視しているのが、作業者の教育によって技能を高めるとともに、間違えることができない仕組みを作ることです。
当社では金型設計を自社で行っているため、原因分析の結果を金型構造の改善に直接反映できることが強みです。
作業方法を見直すだけでなく、誤組付けそのものを防止する構造を金型に組み込むことで、作業者の注意力に依存しない再発防止策を実現しやすい環境があります。
実際の不適合から考えた、教育と金型構造による再発防止
過去に当社では、金型部品を誤った向きに取り付けたことに起因する不適合が発生しました。
表面的には、作業者による組付けミスです。
しかし、原因を調査すると、金型部品の寸法関係によって、本来は防止できるはずの逆組付けが可能な構造になっていたことが分かりました。
この問題に対して、当社では二つの観点から再発防止策を検討しました。
一つ目は、作業者への指導と教育です。
なぜ組付けを間違えたのか、正しい組付け方法や確認方法は何かを指導し、作業者の知識と技能の向上を図ります。
今回の間違いを単に注意するだけで終わらせず、作業者自身の成長につなげることも大切だと考えています。
二つ目は、金型構造そのものを改善することです。
部品を誤った向きに取り付けることができない構造に変更することで、作業者の注意力に依存しない再発防止を目指します。
どれだけ経験を積んだ作業者であっても、人である以上、間違える可能性を完全になくすことはできません。
だからこそ、教育によって作業者の技能を高めるとともに、構造的に間違いを防止する仕組みを作ることが重要です。
人の成長と仕組みの改善を両立させることが、再発防止の基本であると考えています。
協力会社評価の「品質保証体制」を形式だけの評価にしていませんか?
購買担当者の皆様に、一つ考えていただきたいことがあります。
多くの企業では、協力会社に対する定期的な評価を実施されていると思います。その評価項目の中に「品質保証体制」という項目はないでしょうか。
その項目に「満足」「やや満足」などの評価を付ける際、明確な判断根拠を持って評価できているでしょうか。
ISO9001の認証取得や検査設備の充実は、もちろん重要な評価材料です。しかし、それだけで品質保証体制が十分に機能していると判断できるでしょうか。
例えば、不適合が発生するたびに「作業者への再教育」という是正処置報告書が提出され、しばらくすると同じ不適合が再発する。
このような状況では、いくら管理規定や検査設備が整っていても、品質保証体制が十分に機能しているとは言えません。
当社の品質保証体制を評価していただく際には、認証や設備だけでなく、次のような取り組みも評価の対象に加えていただきたいと考えています。
- 製造現場からの予防・改善活動を継続していること
- 不適合の発生原因と流出原因を分け、それぞれの原因を追究していること
- 推測ではなく、現場で確認された事実に基づいて原因分析を行っていること
- 作業者への教育だけでなく、金型構造や作業の仕組みそのものの改善にも取り組んでいること
- 再発防止策の実施だけでなく、その有効性の確認も重視していること
これらは、当社が品質保証において大切にしている取り組みです。
品質保証体制の価値は、規定や設備の有無だけでなく、それらが不適合の未然防止や再発防止にどれだけ機能しているかにあると考えています。
このような視点での評価は、一見すると購買担当者の仕事を増やすように感じられるかもしれません。
しかし、不適合が繰り返されれば、そのたびに協力会社との調整、社内報告、選別対応、納期調整、是正処置の進捗確認など、多くの付随業務が発生します。
協力会社の品質保証体制を適切に評価し、信頼できる取引先を選ぶことは、品質リスクの低減だけでなく、購買担当者自身の業務負担の軽減にもつながります。
協力会社評価の目的は、形式的に評価表を埋めることではなく、安心して仕事を任せられる協力会社を見極めることではないでしょうか。
当社もまた、こうした視点から評価していただけるよう、品質保証体制の継続的な改善に取り組んでいます。
さらなる品質保証の向上に向けた生成AIの活用
当社では現在、不適合の原因分析や是正処置の効率化に向けて、生成AIの活用も進めています。
なぜなぜ分析では、複数の要因を整理し、原因と結果の関係を論理的に考える必要があります。
生成AIを活用することで、情報の整理や分析の視点を広げることが期待できます。
ただし、AIが導き出した回答が、必ずしも正しいとは限りません。実際に検証を行う中でも、確認されていない原因をAIが推測してしまう場面がありました。
そのため、現場で事実を確認するのは人であり、最終的な原因の判断や再発防止策の決定も人が行う必要があります。
AIに原因分析を任せきりにするのではなく、人による判断を支援する道具として活用する。
これが、現在の当社の基本的な考え方です。
これまで培ってきた品質保証の考え方を大切にしながら、新しい技術も取り入れることで、より論理的で効率的な是正処置につなげていきたいと考えています。
まとめ|安心して任せていただける品質保証体制を目指して
金属プレス加工において、品質を安定させるためには、製造現場での未然防止活動と、不適合発生時の適切な再発防止策の両方が必要です。
当社では、製造現場からの継続的な改善提案、金型設計を自社で行う強み、そして徹底した原因分析を組み合わせて、品質の維持・向上に取り組んでいます。
品質保証とは、不適合品を見つけることだけではありません。
不適合を発生させない仕組みを作り、万が一発生した場合にも、同じ問題を繰り返さない仕組みへと改善していくこと。
これからも、お客様に安心して製品をお任せいただけるよう、品質保証体制の充実に努めてまいります。


